リリー・フランキー

 リリー・フランキー
 ――長く続けることがコツ? 

 それだけじゃないですかね、才能よりもそこですよ。はい。であとやっぱ……、同じことをやってたりとかする人でも、才能ある人は若いときにいっぱい見ましたし、でもその人達が全員その仕事をしてるわけじゃなくて、なんかの理由で田舎に帰んなきゃいけないとか、違う職業につかなきゃいけないっていう人で、そのことをやめた人はいっぱい見たんで。
 で結局、やめない厚かましさを持ってるやつだけが残って食ってるっていう。その一つの仕事で食うことってそんなにもしかしたら難しくないのかもしれないっていうか、プロってみんないばってるけど、例えばご飯屋さんだって全部が美味しいご飯屋さんじゃないじゃないですか。本当は美味しいご飯屋さんは一握りしかいなくて。だから……そのー、ま、プロになることってそんなに難しくないんだと思いますけどね。試験があることだったら大変なのかもしれないけど。だから長く続けりゃなんとかなりますよ絶対。周りで長く続けててなんとかなってない人俺知らないですもん。

…… 

 肩書なんなんですかみたいなことを聞かれますけどね。
 ――ご自分の中ではこれだっていうのは。
 全然ないですね。うーん……、でその……、何を使うかっていうことが職業の名前になってるじゃないですかカメラマン、とか画家、とか。でもそういうこだわりなにもないんですよね別に、職業自体に憧れることがまずないから。だからよくイラストレーターになりたいって言う人と話すときはありますけど、そんなもんなりゃいいんですよ免許なんかいらないんだから。でどうやったらなれるんですかっていうから名刺にイラストレーターって書きなさいっていう、ただそれだけのことですよ。仕事はって聞かれても今ちょっとないんですよって言えばいいじゃないですか。でもそれでイラストレーターになって嬉しい、じゃなくてどういう絵を描きたいのかってそこに、先になんかこう自分の……、その絵を、絵を描くことでどういうふうになんかこう、面白く、世の中が変わっていくのかとか、そういうことを考えてる……、人……が、やる仕事だと思うんですけどね。うーん……。だからその職業に憧れてその職業につくことだけがすべてじゃないっていうかその先のことが一番難しい……。だから、その、一つの職業にこだわ……るっていうかその一つの表現にこだわるつもりがないのはそう思ってるからだと思うんですけど。
 ……
 だから、あーのー、その人達にできないことができると思うんですよ。だから全然別にそんなことで、なんか、本物だから偉いとかすごいとかも思わないし。
 何をしてもそうですけど、その道の人たちは、僕のことプロだと思ってないし、僕もそうなりたいと思ってないっていうか。
 でも、ま、僕みたいな偽者じゃないとできないことがあると思うんですよ。それはプロの人達が作ったシステムを変えていくっていうか。