パスモを無くした。つらい。
眠れず、自転車で真夜中の東京を一時間走り回ったあと、ふと無くしたことに気付いて、一気に血の気が引いた。どんな道を通ったか覚えていない。必死で記憶をたどりながらまたもう一度引き返し、道をなめるように凝視したけれど、結局見当たらず。
こうやってうっかりがあるからお金がなくなってゆく。解離。時間の無駄、お金の喪失。つらい。ただでさえお金がないのに……。時間もないのに。
人生に無駄なことはないなんて嘘だ。こうして物を失い、走り回っても徒労だったのは、人生を喪失しただけだ。
疲れた。睡眠不足とパスモを紛失したショックと焦りの中でさらに1時間半走り回って。
たった二千円の入ったパスモを無くしただけで、お金も助けもないことの孤立無援を改めて痛感した。ネズミと家のない人が眠る路地で。