山内マリコさん『あのこは貴族』
面白かった……。不安も何もなく没頭して読んだ。
小説自体読むのが久しぶりだったのだけど、意外な本から悩んでいたことの答えが得られることがあるんだな、と思った。
最近、知り合いのある人に対して、あの人はどうしてあんな人なのだろうとそればかり考えていた。
あんなというのは、知的で、平和そうで、神経が強靭で、愛着が安定していて、落ち着いていて、まともで、ちゃんとしていて、身ぎれいで、健全で、信じられないほどいい人であるということです。
そして、こちらの話を聞いて、私を見て、真剣に対話してくださるのに、この方と話しているときは、いつも何か芯を外したような感覚があるのです。
その正体が掴めず苦悩していました。
その方には自分の感覚はわからず、自分にもその方の感覚がどうもわからないらしい。
この世にはこんなにまともな人がいたのかと、いつもお会いするたびに感動しているほどいい人なのに。
この小説を読む前から、雲の上の人のよう、貴族のよう、違う世界の人と話しているようだと思っていました。
自分はこの方のことを詳しくは何も知らない、きっとつらいこともたくさん経験されてきたに違いない、だけれど、なにか、この人は壊れたことがないような気がする。
この方の感覚や世界観が自分と前提から異なっていて、この方と接していると毎度カルチャーショックを受けるのです。
この小説の華子さんを見て何度もこの方を思い出しました。
色々な謎が解けたような気がします。
私は万引き家族を観て、自分を見ているようだと思うような出自の人間なので。